述語の意味は、辞書では「文の成分の一つ。主語に付いてその動作・状態・性質などを叙述する語」と定義されている(広辞苑)。この説明だけではピンとこないかもしれないが、述語は日本語の文法の中で、特別に重要な役割を担っている。その述語について詳しく解説していく。
1. 述語とは?小学生でもわかる説明
まずは述語というものを、小学生でもわかるように解説してみよう。
以下に示している通り、述語とは、「何がどうする」「何がどんなだ」「何がなんだ」の「どうする」「どんなだ」「なんだ」にあたる部分のことだ。
文において、「どうする(「飛ぶ」等)」・「どんなだ(「青い」等)」・「なんだ(「犯人だ」等)」の部分は、その文の意味を決定づける部分だ。つまり述語は、文の結論を示す役割を担っており、決して欠かすことのできない語句だ。
2. 述語の意味のさらに詳しい解説
ここからは述語の意味をさらに詳しく見ていこう。
日本を代表する国語辞典である『日本国語大辞典(通称:ニッコク)』では、述語は次のように定義されている。
文の成分の一つ。主語に対して、その動作・作用・性質・状態などを叙述し、また問題点として提示された語に対して、その解決について叙述する。日本語では、主語が必ずしも明示されないため、述語が、文成立のための第一成分とされるが、場合によっては述語も省略されることがある。一般に、名詞・動詞・形容詞など、またはそれらに付属語を伴った形が、これに用いられる。「山高し」「彼女は美人だ」「彼は速く走る」「金は払った」の「高し」「美人だ」「走る」「払った」の類。
日本国語大辞典
重要な点は以下の二つだ。
- 述語は、主語の動作・作用・性質・状態などを叙述する。
- 述語は、文成立のための第一成分(※不可欠な成分)とされる。
それぞれ見ていこう。
2.1. 述語は、主語の動作・作用・性質・状態の叙述
第一に述語は、主語の動作・作用・性質・状態を描写する語句だ。そして、動作・作用を描写するときは動詞、性質を描写するときは形容詞・形容動詞、状態を描写するときは名詞 + 助動詞(「だ」・「である」等)のかたちをとる。
なお、主語については、『主語とは?その意味や述語・修飾語との関係(主語述語問題付き)』で解説している。
2.2. 述語は文にとって必要不可欠な成分
第二に述語は、主語と違って、文にとって欠かすことのできない成分だ。
例えば「私は水が飲みたい」という文では、「私は」が主語で、「飲みたい」が述語だ。この文から主語を取って、「水が飲みたい」としても意味は通じる。しかし述語を取って「私は水が」としたら、意味のない文字列になってしまう。
つまり述語は、意味や意思を伝達するために必要不可欠な語句なのだ。日本語には、大きく分けて、主語・述語・修飾語という三種類の語句があるが、このうち文の成立に不可欠な成分は述語だけだ。このことから、述語は日本語にとって特別に重要な語句であると言える。
この点を理解するために、「述語にかかる」ということについて詳しく解説していく。
2.3. 述語にかかる、ということの意味
日本語の文法について学んでいると、よく「述語にかかる」・「述語が受ける」という表現を耳にする。これは、どういう意味だろう。
簡単に言うと「述語にかかる」とは、「述語を修飾する」ということを意味している。そして、「述語が受ける」とは、「述語が修飾される」という意味だ。なお「修飾する」とは、語句の意味を限定する・詳しくするということだ。
具体例を見てみよう。
例えば、「飛ぶ」という述語があるとする。この語句だけでは、何が飛んでいるのかが分からない。そこで主語をつけて「鳥が飛ぶ」としたとする。これによって、「何が」という情報が限定される。つまり、「鳥が」という主語は、「飛ぶ」という述語にかかり、その意味を詳しくしている。
さらに、この文に対して以下のように修飾語を付け加えると、「飛ぶ」という述語に対して、「何が・いつ・どこで・どのように」という情報が限定される。つまり、これらの修飾語は、やはり「飛ぶ」という述語にかかり、その意味を詳しくしている。
このように、ある語句Aが、別の語句Bを詳しくしている(修飾している)とき、「AがBにかかる」または「BがAを受ける」という。つまり「述語にかかる」とは、「述語を詳しくする(修飾する)」ということだ。
なお修飾語については、『修飾語とは?主語述語との見分け方や被修飾語等の解説』で解説している。
補足:日本語は述語を修飾する言葉
先ほど、日本語においては、主語・術後・修飾語のうち、文の成立に不可欠な成分は述語だけであることを伝えた。それは、つまり日本語は、述語を修飾することで意味を伝達する言語であることを示している。以下の補足では、このことについて詳しく解説している。興味がある方は、ボックスをクリックして読み進めて欲しい。
3. 理解が深まる述語問題四選
さて、ここまでの点を踏まえた上で、ここではいくつかの述語問題を解くことで、述語の理解を深めていこう。
以下の文ではどれが述語だろうか。
賢人は歴史から学ぶ。
これは簡単だろう。正解は「学ぶ」だ。
それでは、この文ではどうだろうか。
愚者は歴史を覚え、賢人は歴史から学ぶ。
この場合は、「覚える」と「学ぶ」がどちらも述語になる。なぜなら、この文は「重文」といって、以下の二つの文をくっつけたものだからだ。
- 愚者は歴史を覚える。
- 賢人は歴史から学ぶ。
別々の文が二つあるのだから、述語も二つある。
次の文も重文の一種だ。
愚者はただ歴史を覚えるが、賢人は歴史から学び、考える。
これは以下のように三つの文がくっついている。
- 愚者はただ歴史を覚える。
- 賢人は歴史から学ぶ。
- 賢人は考える。
つまり、「覚える」・「学ぶ」・「考える」の三つが述語だ。
それでは次の文はどうだろう。
歴史を学ぶ賢人は聡明だ。
これも重文と考えてしまいそうだが、そうではない。この場合の「歴史を学ぶ」という部分は、主語の「賢人」にかかる修飾節として機能している。つまり、「歴史を学ぶ賢人は」が主語であり、その主語についている「聡明だ」が述語になる。このように修飾節の中に述語が含まれているものを「複文」と言う。
以上。述語は、日本語において文の根幹を成す成分なので、しっかりと判別できるようにしておこう。ポイントは、述語は、単文・複文には一つ、重文には連結している文の数だけ存在するということだ。
4. まとめ
以上が、述語についての知識の全てだ。補足も含めて全て読み込んでいただいたなら、述語について、世間一般よりも一段も二段も上のレベルの知識を有していると言える。
もし、日本語をもっとうまく操るための本質的な力を鍛えたいのであれば、ぜひ、以上の知識を大切に覚えておいて欲しい。
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