部分積分法は、関数の積を積分したいときに使う公式です。そして、積分は微分の逆演算であるため、部分積分法は積の微分公式の逆演算ということになります。
このページでは、この部分積分法について詳しく解説していきます。
1. 部分積分法
部分積分法(関数の積の積分公式)は次の通りです。
部分積分法
\[\begin{eqnarray}
\int f(x)g^{\prime}(x)dx
&=&
f(x)g(x)-\int f^{\prime}(x)g(x)dx
\end{eqnarray}\]
または
\[\begin{eqnarray}
\int f^{\prime}(x)g(x)dx
&=&
f(x)g(x)-\int f(x)g^{\prime}(x)dx
\end{eqnarray}\]
ポイントは、この公式は \(f(x)g(x)\) の積分ではなく、\(f(x)g^{\prime}(x)\) または \(f^{\prime}(x)g(x)\) の積分を求めるものであるということです。そのため、\(f(x)\) と \(g(x)\) の2つの関数のうち、微分をすると簡単になる方を微分すると良いです。
2. 部分積分法の例題
それでは部分積分の計算例を簡単に確認してみましょう。
x sin x の不定積分
\(\int x \sin x \ dx\) を求めてみましょう。
この関数を \(f(x)=x\) と \(g^{\prime}(x)=\sin x\) の二つの関数の積と考えて、部分積分の公式を使います。なお「sin の積分公式」より、\(g(x)=-\cos x \) です。
これらのことから、この積分は以下の通り求めることができます。
部分積分法の例題①
\[\begin{eqnarray}
\int f(x)g^{\prime}(x)dx
&=&
f(x)g(x)-\int f^{\prime}(x)g(x)dx\\
\longrightarrow
\int x \sin x \ dx
&=&
x ( -\cos x ) \ – \int 1 \cdot (-\cos x) dx \\
&=&
-x \ \cos x + \sin x
\end{eqnarray}\]
参考:cos の微分
log x の不定積分
部分積分法は「対数関数の積分公式」の証明においても使われます。そこで \(\int \log x \ dx\) を部分積分法で求めてみましょう。
そのためには \(f(x)=\log x\) を、 \(f(x)g^{\prime}(x)=\log x \cdot 1\) という関数の積である考えて積分をします。このとき \(g^{\prime}(x)=1\) なので、\(g(x)=x\) となります。
これらのことから、この積分は以下の通り求めることができます。
部分積分法の例題②
\[\begin{eqnarray}
\int f(x)g^{\prime}(x)dx
&=&
f(x)g(x)-\int f^{\prime}(x)g(x)dx\\
\longrightarrow
\int \log x \cdot 1 dx
&=&
\log x \cdot x \ – \int (\log x)^{\prime}\cdot x \ dx \\
&=&
\log x \cdot x \ – \int \frac{1}{x}\cdot x \ dx\\
&=&
\log x \cdot x \ – \int 1\cdot dx\\
&=&
x \log x-x
\end{eqnarray}\]
参考:log(対数関数)の微分
3. 部分積分法の求められ方
さて、それではなぜ部分積分法で、関数の積の積分を求めることができるのでしょうか。
これは「積分とは何か」で解説している通り、積分は微分の逆演算を思い出すことでわかります。具体的には、積の積分である部分積分法は「積の微分公式」の逆演算になっているのです。このことから積の微分公式の両辺を積分することで、部分積分の公式が導き出されることがわかります。
以下の通りです。
部分積分の公式の導出
\[\begin{eqnarray}
\overset{\text{積の微分公式}}{\{ f(x)g(x)\}^{\prime}
=
f^{\prime}(x)g(x)+f(x)g^{\prime}(x)}
\end{eqnarray}\]
\[\begin{eqnarray}
&\xrightarrow{\text{①積の微分公式の両辺を積分}}&
\int \{ f(x)g(x)\}^{\prime}dx
=
\int \{ f^{\prime}(x)g(x)+f(x)g^{\prime}(x) \} dx\\
&\xrightarrow{\text{②そうするとこうなる}}&
f(x)g(x)
=
\int f^{\prime}(x)g(x)dx+ \int f(x)g^{\prime}(x)dx \\
&\xrightarrow{\text{③右辺左辺を入れ替える}}&
\int f(x)g^{\prime}(x)dx
=
f(x)g(x)-\int f^{\prime}(x)g(x)dx
\end{eqnarray}\]
4. 部分積分法のまとめ
以上が部分積分法です。
このような積分公式も、微分公式と同じように直感的に理解できるような幾何学的なイメージで解説できたらいいのですが、残念ながら、それはとても困難です。なぜなら積分のあらゆる公式は、愚直に微分の逆演算を何百回何千回も繰り返すことで、数式から導き出されているものだからです。
そのため、積分の理解を深めたいときは、積分が微分の逆演算であるということを視覚的に理解できるように意識すると良いでしょう。それについてはぜひ、『積分とは何か?最もわかりやすく簡単に理解できるように解説』や『sin の積分はなぜ -cos ?積分と微分の関係を誰でもわかるように解説』をご確認ください。
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