当ページでは知っておくべき積分の公式を6+1つの合計7つ解説します。
プラス1となっているのは、最後の公式は、他の公式を理解していれば簡単に導き出すことができるため、必須ではないからです。しかし質問されることも多いため、ここに含めています。
なお、それぞれの公式の実際の使い方や、積分をマスターするために知っておくべき性質などは、別途リンク先のページでわかりやすく解説していますので、是非そちらも含めてご確認ください。
それでは見ていきましょう。
1. 重要な関数の積分公式
積分をマスターする上で重要な関数は以下の4つです。
- ベキ乗関数:万有引力・人間関係・紛争関係など
- 三角関数:景気循環・日照時間・躁うつ病など
- 指数関数:複利金利・細胞分裂・情報伝達など
- 対数関数:pH・マグニチュード・星の光度など
これらの関数が重要な理由は、現実世界のさまざまな現象に頻繁に現れるからです。つまり、これらの関数の積分を求められるようになると、それらの現象を、より深く分析できるようになるということです。教科書でこれらの関数が必ず出てくるのも、そのためです。
それでは早速、確認していきましょう。
ベキ乗関数の積分
ベキ乗関数の積分は、次の公式で求められます。
ベキ乗関数の積分公式
\[\begin{eqnarray}
\int x^ndx
=
\frac{1}{n+1}x^{n+1}
\end{eqnarray}\]
ベキ指数が自然数以外(負の値や分数)の関数の場合でも、この公式で積分することができます。ただし、 \(x^{-1}\) の積分だけは、公式の規則性から外れて \(\log x\) になりますので覚えておきましょう。
その点も含めて、公式の使い方や、ベキ乗関数の微積分の性質については『ベキ乗関数 x^2 の積分公式と抑えておきたい規則性』で詳しく解説していますのでご確認ください。
三角関数の積分
三角関数の積分は以下の公式で求められます。
三角関数の積分公式
\[\begin{eqnarray}
\int \sin x \ dx
&=&
-\cos x \\
\int \cos x \ dx
&=&
\sin x \\
\int \tan x \ dx
&=&
-\log_e|\cos x| \\
\end{eqnarray}\]
特に sin と cos は現実の現象の中に非常によく現れ、この2つの関数の積分には、
- 反転性
- 循環性
- スライド性
という3つの重要な性質があります。これらの性質を知っておくと、実用面でとても役に立ちます。『三角関数の積分公式と知っておきたい3つの性質』で解説しているので、ぜひご確認ください。
また『sin の積分はなぜ -cos ?積分と微分の関係を誰でもわかるように解説』では、微積分学の基本定理(積分は微分の逆演算である)ということについて、直感的に理解しやすくなるように詳しく解説しています。より深く微積分を理解したいという場合は、ぜひご確認ください。
指数関数の積分
指数関数の積分公式は以下の通りです。
指数関数の積分公式
\[\begin{eqnarray}
\int e^xdx
&=&
e^x
\end{eqnarray}\]
\[\begin{eqnarray}
\int a^xdx
&=&
\frac{a^x}{log_ea}\\
\end{eqnarray}\]
応用では、指数関数は、底をネイピア数 \(e\) に変換して扱うようになるので、そちらだけを覚えておけば十分です。底がネイピア数以外の場合は \(a^x=e^{\log(a)x}\) で変換できます。
さて、このように底がネイピア数の指数関数の積分には、
- 不変性
- 対称性
という性質があります。
「不変性」は積分をしても微分をしても変わらないという性質です。そして、「対称性」は、指数部分が \(cx\) の場合、一度積分をすると反転し、もう一度積分をするともう一度反転して元に戻るという性質があります。
これらを覚えておくと応用の時に役に立ちます。『指数関数の積分公式と知っておくべき重要な2つの性質』で解説しているので、ぜひご覧ください。
対数関数の積分
対数関数の積分公式は次の通りです。
対数関数の積分公式
\[\begin{eqnarray}
\int \log_e x \ dx
&=&
x \log_e x – x\\
\end{eqnarray}\]
この積分公式は暗記しておくと良いですが、もし忘れてしまっても、後述する部分積分法で簡単に求めることができます。そのため、この公式は部分積分法の代表例として挙げられます。
詳しくは『対数関数 log x の積分公式と2通りの証明の解説』をご確認ください。
2. 積分法
ここでは、以下の3つの積分法について解説します。
- 部分積分
- 置換積分
- 分数関数の積分
これらの法則を使うと、関数の積の積分や合成関数の積分を、簡単に求められるようになります。なお、一番下の分数関数の積分の公式は、置換積分の応用なので、置換積分を理解していれば、わざわざ意識する必要はありません。
それでは見ていきましょう。
部分積分法
部分積分法は、関数の積の積分を求めるための公式です。次の通りです。
部分積分法
\[\begin{eqnarray}
\int f(x)g^{\prime}(x)dx
&=&
f(x)g(x)-\int f^{\prime}(x)g(x)dx
\end{eqnarray}\]
この公式は、微積分学の基本定理(積分は微分の逆演算)より、積の微分公式を積分することで導き出されています。使い方や導出方法などを含めて、詳しくは『部分積分法 ~積(掛け算)の積分公式~ の使い方と解説』で解説しています。
置換積分法
置換積分法は、合成関数の積分を求めるための公式です。次の通りです。
置換積分法
\[\begin{eqnarray}
\int f(u(x))u^{\prime}(x)dx=\int f(u(x))du
\end{eqnarray}\]
この公式は、微分における合成関数の微分に対応するものです。そのため合成関数の微分公式から導出できます。使い方や導出方法について、詳しくは『置換積分(合成関数の積分)のやり方と証明を誰でもわかるように解説』で解説しています。
分数関数の積分
分数関数の積分は、以下の公式で解くことができます。
分数関数の積分公式
\[\begin{eqnarray}
\int \frac{f^{\prime}(x)}{f(x)}dx
=
\log|f(x)|
\end{eqnarray}\]
この公式と「部分分数分解」を組み合わせると、あらゆる分数関数の積分を求めることができるようになります。なお、この公式自体は置換積分法から簡単に導き出すことができます。そのため置換積分をしっかりとマスターしていれば、分数関数の積分を解くために公式に頼る必要はなくなります。
これらの点も含めて、使い方等の詳細は『実は簡単!分数関数の積分のやり方と重要な2つのポイント』で解説していますので、ご確認ください。
3. 積分公式のまとめ
以上が抑えておくべき積分公式です。
なお『積分とは何か?最もわかりやすく簡単に理解できるように解説』で解説している通り、積分は微分の逆演算であり、積分の基本的な公式は、実際は延々と微分の逆演算を繰り返すことで導き出されています。この方法で導出されたのが最初の6つの公式です。後の公式は、この6つの公式のどれかを応用することで導き出されているものです。
このような理由のため、微分公式と違って、積分の公式は直感的に理解できるように視覚化することが困難になっています。ただし、対となる微分公式を理解しておくことは、ここで紹介した積分公式の理解が深まることにも役立ちます。そのため、この機会に『微分の公式一覧とその証明が必ず理解できるようになる解説』も復習することをオススメします。
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