当ページでは対称行列について以下のことがわかります。
このページでわかること
- 対称行列の定義
- 対称行列の逆行列
- 対称行列の行列式
- 対称行列の性質
対称行列の定義
対称行列とは右上の三角形の要素と左下の三角形の要素が、対角線を挟んでまったく同じ正方行列のことです。そのため、対称行列は転置をしても全く同じ行列になります。そのことから、対称行列 \(A\) は数式では次のように定義されます。
\[A=A^T\]
* \(A^T\) は \(A\) の転置行列
なお転置行列とは、元の行列の行と列を入れ替えたもののことです。
\[\begin{eqnarray}
A
=
\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{12} & a_{13} \\
a_{21} & a_{22} & a_{23} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33}
\end{bmatrix}, \ \ \ \
A^T
=
\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{21} & a_{31} \\
a_{12} & a_{22} & a_{32} \\
a_{13} & a_{23} & a_{33}
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}\]
たとえば以下は \(3 \times 3\) の対称行列です。対角線を挟んで上三角と下三角の要素が反転したものになっていることがわかります。
\[
M=
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 \\
2 & 1 & 2 \\
3 & 2 & 1 \\
\end{bmatrix}
\]
続いて、以下は \(5 \times 5\) の対称行列です。
\[
M=
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\
2 & 1 & 2 & 3 & 4\\
3 & 2 & 1 & 2 & 3 \\
4 & 3 & 2 & 1 & 2 \\
5 & 4 & 3 & 2 & 1
\end{bmatrix}
\]
対称行列の逆行列
対称行列 \(A\) の逆行列 \(A^{-1}\) は必ず対称行列になります。\(3 \times 3\) 行列の例を見てみましょう。以下の通りです。
\[\begin{eqnarray}
A
=
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 \\
2 & 1 & 2 \\
3 & 2 & 1
\end{bmatrix}, \ \ \ \
A^{-1}
=
\begin{bmatrix}
-0.375 & 0.5 & 0.125 \\
0.5 & -1 & 0.5 \\
0.125 & 0.5 & -0.375
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}\]
対称行列の行列式
行列式はすべての正方行列で求めることができます。そしてすべての対称行列は正方行列であるため、対称行列にも行列式があります。ただし、対称行列だからといって特別な性質があるわけではありません。普通の正方行列の行列式を求めることと全く同じです。
対称行列の性質
対称行列には以下のような性質があるため、様々なところで応用されています。
- 対称行列は正方行列である。
- 対称行列の固有値は実数である。
- 対称行列 \(A\) が正則行列であるとき、その逆行列 \(A^{-1}\) も対称行列になる。
- 対称行列 \(A\) の逆行列 \(A^{-1}\) と、転置行列 \(A^T\) の逆行列 \((A^T)^{-1}\) は同じになる。
- 行列 \(A\) と \(B\) がともに同じサイズの対称行列である場合、\(A+B\) と \(A-B\) も対称行列になる。
- 対称行列のスカラー倍も対称行列である。
- 対称行列は常に対角化可能である。
- あらゆる特定の固有値において、固有ベクトルは直交している。