当ページでは単位行列について以下のことがわかります。
このページでわかること
- 単位行列の定義
- 単位行列の性質
- 単位行列の逆行列
単位行列とは
単位行列とは、\(n\) 次正方行列で、対角線の要素が 1 で、それ以外の要素が 0 のもののことです。慣習的に大文字の \(I\) で表されます。
\[\begin{eqnarray}
I_1=
\begin{bmatrix}
1
\end{bmatrix}, \ \ \
I_2=
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}, \ \ \
I_3=
\begin{bmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & 0 & 1
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}\]
単位行列の性質
単位行列には次の性質があります。
常に正方行列である
単位行列は常に行数と列数が同じ正方行列です。対角線の要素が 1 で、それ以外の要素が 0 だったとしても正方行列でないものは単位行列ではありません。
任意の行列と単位行列で掛け算を行っても何も変わらない
任意の行列と単位行列の掛け算を行っても、任意の行列は何も変わりません。
\[\begin{eqnarray}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3\\
4 & 5 & 6\\
7 & 8 & 9
\end{bmatrix}}
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & 0 & 1
\end{bmatrix}}
=
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3\\
4 & 5 & 6\\
7 & 8 & 9
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]
通常、行列の掛け算は掛ける順番を変えると解も変わりますが、単位行列との掛け算の場合は変わりません。
\[\begin{eqnarray}
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & 0 & 1
\end{bmatrix}}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3\\
4 & 5 & 6\\
7 & 8 & 9
\end{bmatrix}}
=
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3\\
4 & 5 & 6\\
7 & 8 & 9
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]
長方行列との掛け算でも同じです。
\[\begin{eqnarray}
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 \\
5 & 6 & 7 & 8\\
\end{bmatrix}}
=
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 \\
5 & 6 & 7 & 8
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]
単位行列と逆行列の関係
行列 \(A\) とその逆行列 \(A^{-1}\) との掛け算は、掛ける順番に関わらず、必ず単位行列になります。
\[\begin{eqnarray}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
-2 & 1
\end{bmatrix}}
\overset{A^{-1}}{
\begin{bmatrix}
0.5 & -0.5 \\
1 & 0\\
\end{bmatrix}}
=
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]
\[\begin{eqnarray}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
0.5 & -0.5 \\
1 & 0
\end{bmatrix}}
\overset{A^{-1}}{
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
-2 & 1\\
\end{bmatrix}}
=
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]