対数関数 log の微分は、指数関数と並んで、微分学において重要な分野です。そこで、当ページではlogの微分について、誰でも理解できるように丁寧に開設していきたいと思います。
具体的には、以下のことがわかるようになります。
- 対数関数(log)とは何かが簡潔にわかる。
- log の微分公式がわかる。
- log の微分公式の証明がわかる。
なお、より理解を深めるには、当ページと、『指数関数の微分を誰でも理解できるように解説』を併せてご覧いただくのが良いでしょう。なぜなら、対数関数と指数関数は対になっているからです。
それでは、早速見ていきましょう。
1. 対数関数とは
対数関数は、身近な例だけでも、以下のような現象を表す重要な関数です。
- 水素イオンの指数を示すpH
- 騒音の程度を示すフォーン
- 地震の強さを示すマグニチュード
- 星の明るさを示す光度
また、その性質上、掛け算を足し算に変えるという特徴があるので、急激な変化を和らげる関数としても使われます。
ここでは、この対数関数に関して、以下の2点を簡潔におさらいしておきたいと思います。
- 対数(log)
- 対数関数
それでは早速見ていきましょう。
1.1. 対数(log)とは
対数とは、一言でいうと、指数関数における指数のことです。指数関数は以下の通り、指数部分が変数になっている関数のことでした。
指数
そして対数とは、この中から指数部分だけを抜き出して、以下のように書きあらためたもののことを言います。
対数
つまり対数とは、「\(y\) となるような \(a\) の指数 \(x\) は何か?」を示す値なのです。なお \(\log\) 記号は、英語で対数を意味する “logarithm” の頭文字を取ったものです。以下で指数と対数を見比べてみましょう。
指数関数と対数関数の比較
\[\begin{eqnarray}
2^1=2 \ \ &\longleftrightarrow& \ \ 1=\log_{2}2\\
2^2=4 \ \ &\longleftrightarrow& \ \ 2=\log_{2}4\\
2^3=8 \ \ &\longleftrightarrow& \ \ 3=\log_{2}8\\
&\vdots&\\
2^x=y \ \ &\longleftrightarrow& \ \ x=\log_{2}y\\
\end{eqnarray}\]
以上が対数 \(\log\) です。
1.2. 対数関数とは
対数関数とは、底は一定で、真数の部分を変数 \(x\) にしたもののことです。
対数関数
\[
f(x) = \log_{a}x\\
{}_{a>0, \ a\neq 1}
\]
この対数関数グラフは底が \(a > 1\) の場合と、\(0 < a < 1\) の場合で異なります。
まず底が \(a > 1\) の場合は下図のような曲線を描きます。ご覧のように、\(a\) の値が大きくなるほど、傾きが緩やかになっていきます。比較しやすくするために対となる指数関数も描いています。
底が \(0 < a < 1\) の場合はこれとは逆になります。
なお、\(\log x\) のように底の値が明示されていない場合は、底をネイピア数 \(e\) とした自然対数 \(\log_{e}a\) であることを意味します。ネイピア数 \(e\) はとても面白い数字であり、次のような性質があります。
ネイピア数 \(e\) と実数の関係
\[\begin{eqnarray}
n&=&e^{\log_{e}n}\\
&\vdots&\\
2&=&e^{\log_{e}2}\\
3&=&e^{\log_{e}3}\\
4&=&e^{\log_{e}4}\\
\end{eqnarray}\]
これについては、『指数関数の微分を誰でも理解できるように解説』でも詳しく触れているので、ぜひご確認ください。
2. log の微分公式
さて、それでは対数関数 (log)の微分はどのようになるのでしょうか。ここでは、その微分公式と、実際の関数と導関数のグラフを確認しましょう。なお、公式は対数の底がネイピア数 \(e\) の場合と、それ以外の場合で異なります(厳密には同じですが、底が \(e\) の場合の方が楽になります)。
それでは見てみましょう。
2.1. 対数関数 \(\log_ax\) の微分公式
対数関数の微分公式は次の通りです。
対数関数の微分公式
\[
(\log_a x)^{\prime}=\dfrac{1}{x \log_e a}
\]
底が \(2\) の場合のグラフを確認してみましょう。
2.2. 自然対数関数 \(\log_ex\) の微分公式
次に対数の底がネイピア数 \(e\) の場合は、次の通りになります。
自然対数関数の微分公式
\[
(\log x)^{\prime}=\dfrac{1}{x}
\]
グラフで視覚的に確認してみましょう。
3. log の微分の証明
それでは、対数関数 log の微分は、なぜこれらの公式で求められるのでしょうか。ここでは、この点について考えていきましょう。
3.1. \(\log_{a}x \) の微分の証明
底がネイピア数 \(e\) ではない対数関数 \(\log_{a}x\) の微分を、微分の定義式を使って求めてみましょう。すると、以下のようになります。
対数関数 \(\log_{a}x\) の微分を定義式から求める①
\[\begin{eqnarray}
(\log_{a}x)^{\prime}
&=&
\dfrac{\log_{a}(x+dx)-\log_{a}(x)}{dx}\\
&=&
\dfrac{1}{dx}
\left \{
\log_{a}(x+dx)-\log_{a}(x)
\right \}\\
&=&
\dfrac{1}{dx}
\log_{a}\left( \dfrac{x+dx}{x} \right)\\
&=&
\dfrac{1}{dx}
\log_{a}\left(
1+ \dfrac{dx}{x}
\right)\\
&=&
\log_{a}\left(
1+ \dfrac{dx}{x}
\right)^{\frac{1}{dx}}
\end{eqnarray}\]
※ 3段目は対数公式 \(\log_aM-\log_aN=log_a \frac{M}{N}\) より。
※ 5段目は対数公式:\(k\log_aM=\log_aM^k\) より。
ここで、\(\frac{dx}{x}=dX\) と置きます。\(dx\) はほぼ \(0\) である値なので、\(dX\) もほぼ \(0\) になります。そのため、次のように数式を変換することが可能です。
対数関数 \(\log_{a}x\) の微分を定義式から求める②
\[\begin{eqnarray}
\log_{a}\left(
1+ \dfrac{dx}{x}
\right)^{\frac{1}{dx}}
&=&
\log_{a}(1+dX)^{\frac{1}{x \cdot dX}}\\
&=&
\log_{a} \{(1+dX)^{\frac{1}{dX}} \}^{\frac{1}{x}}
\end{eqnarray}\]
※ 1段目の指数部分は \(\frac{dx}{x}=dX\) より \(dx=x \cdot dX\) となる。
※ 2段目は指数公式 \(a^{mn}=(a^m)^n\) より。
さて、ここで \(\log\) に渡している値 \((1+dX)^{\frac{1}{dX}}\) に注目してみましょう。そう、これはネイピア数 \(e\) の定義そのものになっています(これを計算すると \(2.718 \cdots \) という数字が現れます)。
このことから以下のように変換することができます。
対数関数 \(\log_{a}x\) の微分を定義式から求める③
\[\begin{eqnarray}
\log_{a} \{(1+dX)^{\frac{1}{dX}} \}^{\frac{1}{x}}
&=&
\log_{a} e^{\frac{1}{x}} \\
&=&
\dfrac{1}{x} \log_{a}e\\
&=&
\dfrac{1}{x} \dfrac{1}{\log_{e}a}\\
&=&
\dfrac{1}{x\log_{e}a}
\end{eqnarray}\]
※ 2段目は対数公式 \(k\log_aM=\log_aM^k\) より。
※ 3段目は対数公式 \(\log_{a}b=\dfrac{1}{log_{b}a}\) より。
以上より、公式が導き出されました。
3.2. \(\log_{e}x \) の微分の証明
ここまで出来ていたら、自然対数 \(\log_{e}x \) の微分の証明は簡単です。定義より、\(\log_{e}e=1\) です。そのため以下のようになるのですね。
自然対数関数 \(\log_{e}x\) の微分の証明
\[\begin{eqnarray}
(\log_e x)^{\prime}
&=&
\dfrac{1}{x \log_e e}\\
&=&
\dfrac{1}{x(1)}\\
&=&
\dfrac{1}{x}
\end{eqnarray}\]
4. logの微分のまとめ
以上が log の微分です。最後に公式をもう一度まとめておきましょう。
対数関数の微分公式
\[
(\log_a x)^{\prime}=\dfrac{1}{x \log_e a}
\]
自然対数関数の微分公式
\[
(\log x)^{\prime}=\dfrac{1}{x}
\]
なぜ、このようになるのかもしっかり理解しておきましょう。重要なポイントは、対数関数を微分の定義式に基づいて計算していくと、必ずネイピア数 \(e\) が現れて、\(\log_{a}e^{\frac{1}{x}}\) の形になるということです。
なお、微分の応用に進んでいくと、対数関数の底はほぼ \(e\) に変換して解釈していくことになります。『指数関数の微分を誰でも理解できるように解説』で解説している理由と同じで、その方が、対数部分のみに着目できるため、比較や検証が簡単になるからです。
そのため以下の、底の変換公式も覚えておきましょう。
対数関数の底を \(e\) に変換する公式
\[
(\log_ab)=\dfrac{\log_eb}{\log_ea}
\]
以上、当ページがlogの微分の理解に役立ったなら嬉しく思います。
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