当ページでは直交行列について以下のことがわかります。
このページでわかること
- 直交行列の定義
- 直交行列の行列式
- 直交行列の逆行列
- 直交行列とユニタリー行列
- 直交行列の性質
直交行列とは
直交行列とは、正方行列であり、列ベクトルまたは行ベクトル同士がお互いに直角に交わっているもののことです。そして、ある行列の転置行列と逆行列が同じものになるとき、その行列は直交行列であることになります。または、ある行列とその転置行列の積が単位行列になるような行列が直交行列であるというようにも言えます。
なお、列ベクトルまたは行ベクトルが単位ベクトル(=長さが 1 のベクトル)のとき、その直交行列は正規直交行列と言います。
まとめましょう。
行列 \(A\) が直交行列だとします。このとき以下が成り立ちます。
\[A^T=A^{-1}\]
そして、このとき同時に以下が成り立つことになります。
\[AA^T=I\]
たとえば以下の行列 \(A\) は直交行列です。
\[
A=
\begin{bmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & -\frac{1}{\sqrt{2}}\\
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{bmatrix}
\]
この行列の転置行列と逆行列は同じものになります。
\[\begin{eqnarray}
\overset{A^T}{
\begin{bmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}\\
– \frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{bmatrix}}
=
\overset{A^{-1}}{
\begin{bmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}\\
-\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]
そのため、この行列 \(A\) とその転置行列 \(A^T\) を掛け算すると単位行列 \(I\) になります。
\[\begin{eqnarray}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & -\frac{1}{\sqrt{2}}\\
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{bmatrix}}
\overset{A^{T}}{
\begin{bmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}\\
-\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{bmatrix}}
=
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]
全ての直交行列は正方行列です。しかし全ての正方行列が直交行列であるわけではありません。
直交行列の行列式
全ての直交行列は正則行列になります。そして行列式には転置をしても変わらないという性質があります。そのため正規直交行列の行列式は常に -1 か + 1 になります。
\[
|A|=
\begin{vmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & -\frac{1}{\sqrt{2}}\\
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{vmatrix}
=
1
\]
\[
|A^T|=
\begin{vmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}\\
-\frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{vmatrix}
=
1
\]
直交行列の逆行列
ここまで見てきた通り、直交行列 \(A\) の逆行列 \(A^{-1}\) は、転置行列 \(A^T\) と等しくなります。
直交行列とユニタリー行列
転置行列 \(A^T\) と逆行列 \(A^{-1}\) が同じ行列 \(A\) のことをユニタリー行列と言います。
\[AA^T=I\]
基本的に、線形代数ではユニタリー行列は直交行列でもあります。
直交行列の性質
最後に直交行列の性質をまとめておきます。
- 正方行列は直交化することができる(eg. グラムシュミットの直交化法)
- 単位行列は直交行列である
- 直交行列同士の積は直交行列になる
- 直交行列の転置は直交行列である
- 直交行列の逆行列は直交行列である
- 正規直交行列の行列式の値は ±1 になる
- 直交行列は自然と対称行列になる
- 直交行列の転置行列と逆行列は同じになる
- 直交行列の固有値は ±1 になり、固有ベクトルも実数の直交ベクトルになる