置換積分は、合成関数の積分を求めるために非常に役立つ公式であり、合成関数の微分と対になるものになっています。積分を行う上で必要なものなので、ここでしっかりと理解しておきましょう。
それでは早速始めたいと思います。
1. 置換積分の公式
置換積分法は、合成関数を積分するときに使うものであり、公式は以下の通りです。
置換積分の公式
\[\begin{eqnarray}
\int & f(u(x))u^{\prime}(x)dx
=
\underset{※ \ u=u(x)}{\int f(u)du}
\end{eqnarray}\]
左辺の積分式は変数 \(x\) の積分であり、右辺は変数 \(u=u(x)\) の積分であるという点に注意してください。
簡潔に説明すると、この公式は「合成関数の積分は、その合成関数の内側の関数を変数 \(u\) に置き換えて、その変数 \(u\) の変化 \(du\) で積分をすることで簡単に求められる」ということを表しています。
とは言っても、文字だけではいまいち理解しづらいと思いますので、実際にこの公式を使って、合成関数の積分を求めてみましょう。
2. 置換積分の例
例として、以下の積分を求めることにします。
\[\begin{eqnarray}
\int \cos(x^2) 2x \ dx
\end{eqnarray}\]
この積分を求めるために重要なのは、この式は、以下に示している通り、置換積分の公式の左辺と同じ形になっているという点です。というよりも合成関数は必ずこの形になります。つまり、合成関数の内側の関数は必ず \(u\) になり、外側の関数は必ず \(f\) になります。
\[\begin{eqnarray}
&\int& \underbrace{\cos(\overbrace{x^2}^{u})}_{f} \overbrace{2x}^{u^{\prime}}dx
=
&\int& f(u(x))u^{\prime}(x)dx
\end{eqnarray}\]
これを公式の通り、 \(\int f(u)du\) の形に変換してやることで、とても簡単に積分を行えるようになります。具体的には、以下の4つのステップを行います。
- \(du\) を求める。
- 積分式を \(u\) と \(du\) で置換する。
- 積分を行う。
- \(u\) と \(du\) を再置換する。
それでは見ていきましょう。
\(du\) を求める
まずは \(du\) を求めます。\(u=x^2\) なので、この両辺を微分することで簡単に \(du\) を求めることができます。
\[\begin{eqnarray}
u&=&x^2\\
\xrightarrow{微分}
\frac{du}{dx}&=&2x\\
\xrightarrow{変形}
du&=&2x \ dx
\end{eqnarray}\]
積分式の \(u\) と \(du\) を置換する
これで \(u=x^2\), \(du=2xdx\) であることがわかったので、以下の通り、これらで積分式を置換すれば、簡単に積分を行える形になります。
\[\begin{eqnarray}
&\int& \cos(\underbrace{x^2}_{u}) \underbrace{2x \ dx}_{du}\\
\xrightarrow{\text{置換}}
&\int& \cos(u)du
\end{eqnarray}\]
積分を行う
\(\cos(u)\) を \(du\) で積分するという単純な形になりましたので、そのまま積分を行います。
\[\begin{eqnarray}
\int \cos(u)du&=&\sin(u)\\
\end{eqnarray}\]
参考:「cosの積分はなぜsin?」
\(u\) と \(du\) を再置換する
最後に、この \(u\) を \(x^2\) に再置換して元に戻します。
\[\begin{eqnarray}
\sin(u)
&\xrightarrow{\text{再置換}}&\sin(x^2)
\end{eqnarray}\]
以上が \(\cos(x^2)dx\) の積分の求め方です。
これらを一つの式にまとめてスッキリと表現したものを以下に載せておきます。
まとめ
\[\begin{eqnarray}
\int \underbrace{\cos(\overbrace{x^2}^{u})}_{f} \underbrace{\overbrace{2x}^{u^{\prime}}dx}_{du}
&=&
\int \cos(u)du\\
&=&
\sin(u)\\
&=&
\sin(x^2)
\end{eqnarray}\]
それでは、なぜこの方法で合成関数の積分を求めることができるのでしょうか。次にこの点について考えてみましょう。
3. 置換積分の解説
『部分積分法 ~積(掛け算)の積分公式~ の使い方と解説』でもお伝えした通り、積分公式を直感的に理解できるように幾何学的に解説するのは、とても困難です。
なぜなら積分とは、本来、微分の逆演算を愚直に行うことで求められるものだからです。そして積分公式は、その逆演算を延々と繰り返すことによって、数式的に導き出されているものなのです。
そのため積分公式は、数式を経る方法でしか理解することはできません。
ただし、置換積分の逆演算である合成関数の微分は視覚的に理解することが可能であり、それが積分の理解を深めることにも役立ちます。というよりも、置換積分の公式は、合成関数の微分を使って導き出されているので、合成関数の微分の理解は必須です。これについては『合成関数の微分を誰でも直観的かつ深く理解できるように解説』で詳しく解説しているので、ぜひご確認ください。
以上を前提とした上で、置換積分の公式がどのように導き出されているのかを見ていきましょう。
まず、以下のように合成関数 \(F(u(x))\) を \(f(u(x))\) の積分(原始関数)とします。
\[\begin{eqnarray}
&\int& f(u(x))d(u(x)) = F(u(x))\\
\xrightarrow{u(x) = u \ として簡単化}
&\int& f(u)du =F(u)
\end{eqnarray}\]
さて、この \(F(u(x))\) は、合成関数の微分公式を使って、以下のように微分することができます。
\[\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx}F(u(x))
&=&
F^{\prime}(u(x))u^{\prime}(x)\\
\xrightarrow{F^{\prime}(u(x))=f(u(x))}
&=&
f(u(x))u^{\prime}(x)
\end{eqnarray}\]
微分と積分はお互いに逆演算なので、これは以下のように書き換えることができます(詳しくは『積分とは何か?最もわかりやすく簡単に理解できるように解説』で解説しています)。
\[\begin{eqnarray}
\int f(u(x))u^{\prime}(x)
=
F(u(x))
\end{eqnarray}\]
既に示したように、\(F(x(u))=\int f(u)du\) なので、ここで公式が導き出されます。
\[\begin{eqnarray}
\int & f(u(x))u^{\prime}(x)dx
=
\underset{※ \ u=u(x)}{\int f(u)du}
\end{eqnarray}\]
4. 置換積分法のまとめ
以上が置換積分法です。重要ポイントをまとめると、以下の通りです。
重要ポイント①
置換積分は、合成関数の微分の逆演算である。
合成関数の微分の公式は \(f(u(x))^{\prime}=f^{\prime}(u(x))u^{\prime}(x)\) です。そして置換積分法は、まず関数を \(F^{\prime}(u(x))u^{\prime}(x)\) という形にして、これの逆微分である \(F(u(x))\) を見つけるというものになっています。
重要ポイント②
置換積分は、合成関数の内側の関数を変数にすることで、ごちゃごちゃした数式を簡単化するものである。
変数化して置換するのは、あくまでも合成関数の内側の関数です。これを間違えてしまうと積分できなくなってしまうので、覚えておきましょう。
ぜひ参考にして頂ければと思います。
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